今回はこうの史代さんの『ギガタウン 漫符図譜』を紹介していきます。
鳥獣戯画とは何ぞや?
そもそも皆さんは鳥獣戯画をご存知でしょうか?
鳥獣戯画は平安時代末期から鎌倉時代初期に描かれた絵巻物で、作者は不明(お坊さんが描いたとも言われています)、動物を擬人化して当時の貴族や僧の社会を風刺画にしているそうです。
ちなみに私は高校の日本史の授業で鳥獣戯画を知りました。古代中世の日本絵画って事件や出来事を絵巻物にしたりとか、人物画とかとにかく厳かな絵画のイメージがあるのですが、その中でも鳥獣戯画はラフというか、息抜きで描いたような落書き感がある絵だなって思っていました。あと、動物を擬人化したアイデアも風刺も面白いですよね。漫画みたいな絵画が900年以上前から描かれていたのも驚きです。
『ギガタウン』は鳥獣戯画と漫符を同時に楽しめる漫画!
漫画家・こうの史代さんの『ギガタウン 漫符図譜』(以下『ギガタウン』と省略)は、鳥獣戯画に登場する動物たちが人間のように暮らしている様子を描いた4コマ漫画です。それと同時にこの漫画は漫符事典にもなっています。
こうの先生も『ギガタウン』の漫符について以下のことを記しています。
<漫符図譜>って?
『ギガタウン 漫符事典』/こうの史代/朝日新聞出版
漫符とは♫、💢、💦など漫画特有の表現記号のこと。著者はこの漫符を採集し、一つずつ説明を記し、用例として本編の漫画を描きました。つまり本書全体が、本邦初(おそらく)の漫符事典(=図譜)にもなっているのです。
こうの先生は『ギガタウン』のあとがきに、漫画が読めない人(漫画の読み方が分からない人)にとって今の漫画は、コマの流れと漫符が分かりづらいと指摘しています。そして『ギガタウン』を通して多くの漫符を説明しながら、実用として漫符を漫画(4コマ)で伝えていく本が作りたかったとも述べています。
昔の漫画には、コマごとに番号がふってあったんだって。知らなかった…!
漫画のキャラクターを鳥獣戯画をテーマにしたのも面白いのですが、漫符事典にもなっているのは画期的だと思います。そりゃあ『このマンガがすごい2019』にもランクインされますよね。
主要キャラはウサギ、カエル、サル!ズッコケ三人組のような物語!
『ギガタウン』の主人公は特に明記されていないですが、多分みみちゃんという、小学生の女の子のウサギが主人公なのだと思います。みみちゃんはお茶目でだらしないところが多いけど、どこか憎めない子で、私の中で彼女は「ちびまる子ちゃん」のまる子みたいなイメージです。
そして相棒のかえるのあおい君(みみちゃんと同じクラスの男の子)は、カエルあるあるネタ(冬眠や海水無理とか)で、不憫に扱われることが多いです(その反面ほのぼのする話もある)。
あと、サルのキイ子ちゃんは愛嬌がとっても可愛らしい。鳥獣戯画のサルってあんまり可愛くない感じでしたが、こうの先生の描くキイ子ちゃんのおかげで、サルのキャラクターが初めて可愛いと思えました。
作者は『この世界の片隅に』のこう史代さん
こうの先生の描く漫画はタッチが優しいイメージがあるのですが、『ギガタウン』もやはりタッチが柔らかく、ほっこりほのぼのする感じがして、それが鳥獣戯画のテイストと合っている気がします。さらに『ギガタウン』の時代背景も現代というよりはひと昔前の日本の日常風景を題材にしているのでそれがとてもエモいです。
『ギガタウン』を読んでみて、感想
この本を読んで、漫符の起源について考えるきっかけになれたと思います。
普段私は様々な漫画を読んでいて、漫符について特に気にして読んでいなかったのですが、漫画をより理解するには漫符の知識も読者には必要だと改めて気づきました。漫画家や絵描きさんはきっといろんな漫符を知っていて、それを使いこなしているのがすごいですね!
『ギガタウン』を読むのにおすすめの人
- キャラクターものが好きな人
- 漫画家を目指している人
ピカチュウやくまモンとか、可愛いキャラクターが好きな人にはこの漫画がおすすめです。あと漫画家を目指している人には、この本を読むことで漫符について理解が深まるのではないでしょうか。
鳥獣戯画関連
私が鳥獣戯画にハマったのは、TOPECONHEROESダーヤマさんというお方が運営されているフリー素材サイト「ダ鳥獣戯画」を見てからです。
ダーヤマさんの描く鳥獣戯画のイラストはとにかくシュールなんです。鳥獣戯画で時事ネタも結構描いていらっしゃるので、まさに風刺画だと思います。そして「ダ鳥獣戯画」の素材はさんずいが色々デザインを作る上で大変お世話になっております!
『ギガタウン』バナー
本屋さんにある本の紹介POPみたいなバナーを作ってみました。素材はダーヤマさんの「ダ鳥獣戯画」を使用しています。
最後までご覧いただきありがとうございました!